個数濃度と測定の見方 —「1ccに◯個」の正しい読み解き方

個数濃度と測定の見方 —「1ccに◯個」の正しい読み解き方

個数濃度と測定の見方 —「1ccに◯個」の正しい読み解き方

「1ccに1600万個のウルトラファインバブル」「平均100ナノメートル」。製品ページでこんな数字を見て、どこまで本気にしていいのか迷ったことはないでしょうか。数が多いほど良い製品なのか。この数字はどうやって測っているのか。

先に正直な結論をお伝えします。これらの数字は「粒子の信号(泡や微粒子)がどれだけ検出されたか」の目安にはなりますが、「泡だけの多さ」や「効果の高さ」「製品の優劣」をそのまま表すものではありません。理由は測り方にあります。UFB(ウルトラファインバブル・1マイクロメートル未満の泡)を数える技術には得意と苦手があり、多くの手法は「泡」と「水中のゴミ(不純物・微粒子)」をうまく区別できません。だから数字は測り方や前処理で変わりうるし、測る手順がそろわなければ施設ごとにばらつきうるものです。

この記事は「1ccに◯個」という数字を賢く読むための基礎知識です。数字を否定するのではなく、どこまで信じてどこから割り引くかの目安を持ち帰ってもらうのが目的です。

なお本文では情報の出どころ(研究で確認されたことか、公的な規格か、メーカーが自社で示していることか)がわかるように書き分けています。


そもそも「測る」とは何をしているのか

UFBは1マイクロメートル(1000分の1ミリ)より小さい泡です。髪の毛の太さが約70〜100マイクロメートルなので、その100分の1以下。可視光の波長(およそ0.4〜0.8マイクロメートル)と同じくらい〜それより小さい大きさまで含みます。だから肉眼では白く濁って見えにくく、ふつうの光学顕微鏡でもとらえにくい。理由は一つではありません。装置が細部を見分けられる限界(分解能)に近いことに加え、泡と水の見え方の差(コントラスト)が小さいこと、泡が水中を絶えず動いていることも重なります。

では製品ページの数字はどう出しているのか。多くは「泡が動く様子」や「泡が散らす光」を機械で捉え、そこから逆算して大きさや個数を推定しています。ここが大事な点です。泡そのものを直接見て数えているのではなく、間接的な信号から計算で求めている、ということです。

計算で求める以上、どの信号を使うか(どの測定法か)、事前に何を取り除くか(前処理)で結果は変わります。まずは代表的な測定法が「何を測って、何が苦手か」を見ていきます。


主な測定法と、それぞれの得意・不得意

UFBやファインバブルの測定に使われる主な手法を整理すると次のようになります。国際標準化機構(ISO)も技術報告 ISO/TR 23015 で、各手法の長所と限界を一覧(マトリクス)にして整理しています[UFB-DEF-14]。

測定法何を測るか得意なこと苦手なこと
NTA / PTA(粒子の動きを追う)レーザを当て、泡が散らす光をカメラで動画撮影し、動き方から大きさと個数を計算「1ccに◯個」という個数濃度が出せる泡と不純物を区別できない。ごく小さい泡は写りにくいとの指摘もある(比較値は要検証)
DLS(光の揺らぎを見る)散乱光の細かな揺らぎから平均的な大きさを求める手軽で速い。平均サイズの目安向き個数は出せない。大きい粒子に結果が引っ張られる
レーザ回折(光の曲がり方)光の回折パターンから大きさの分布を求める広い範囲を一度に測れる。マイクロバブル域に強いサブミクロン(UFB域)は苦手で、UFB本体の測定には不向き
画像解析(直接観察)泡を映像で捉えて数えるマイクロバブルなら直接見えるUFBは分解能・コントラストの限界に近く、動きも速いため直接観察が難しい
RMM(浮くか沈むか)泡の「浮力質量」の正負で気泡か固体かを判別泡と不純物を区別できるとされるが比較データは要検証装置が限られ、普及途上

製品ページの「1ccに◯個」は、たいていいちばん上の NTA(ナノ粒子トラッキング解析)系で測っています。個数濃度を出せるのがこの手法の強みだからです。ただし表のとおり、この手法には無視できない弱点があります。


いちばん大事な事実:多くの手法は「泡」と「ゴミ」を区別できない

ここが本記事の核心です。NTAをはじめ広く使われる測定法の多くは、水中にあるのが「気体の泡」なのか「固体の微粒子(不純物)」なのかを見分けられません。どちらも同じように光を散らすため、機械は両方まとめて「粒子」として数えてしまいます。

この限界は業界の外からの批判ではなく、規格をつくる側自身が認めています。前述の ISO/TR 23015 は、各手法の限界としてこの区別の難しさを整理した公的な技術文書です[UFB-DEF-14]。

実際に、産業技術総合研究所の安井久一氏は日本音響学会誌の解説(2017年)で、共振式の質量測定によって「気体でできた安定なUFBが実際に存在すること」が実験で確認された一方、100〜200ナノメートルの気体の泡と、250〜500ナノメートルの固体粒子とを見分けるには専用の測定が要ることを紹介しています[UFB-GEN-07]。つまり、ふつうに測ると泡とゴミが混ざったまま数えてしまう可能性がある、ということです。

この事実から2つのことが言えます。

  • 前処理で水中のゴミを取り除いたかどうかで、数字は変わりうる。
  • 「1ccに◯個」の中に、泡でないものが混じっている可能性がある。

だから数字は「泡がこれだけ出ている(かもしれない)」という目安であって、精密な絶対値として受け取るものではありません。


施設が違えば数字もばらつく

もう一つ知っておきたいのが、測定法そのものが持つ「測る場所による振れ」です。

欧州を中心とした12の研究室が、大きさのわかった標準的な粒子(UFBの泡ではなく、基準となるポリスチレン球や金ナノ粒子)を持ち寄り、同じ NTA という手法で測り合う国際比較試験が行われました。その結果、手順を統一しないまま測ると研究室ごとのばらつきが大きく(ばらつきの指標がおおむね30%台)、統一した手順をそろえて初めて大きさの測定が高い再現性(ばらつき約3%まで改善)に近づいたと報告されています。この試験は査読つきの学術誌『Journal of Nanoparticle Research』(2013年)に掲載されました[UFB-GEN-26]。

これはあくまで標準粒子を使ってNTAという手法の再現性を調べたものです。とはいえ、大きさのわかった粒子でさえ手順しだいで研究室間の数字がここまで動くのなら、正体のはっきりしないUFBの泡を測るときは、なおさら手順の統一が欠かせない、と読み取れます。しかもこの試験で高い再現性が得られたのは「大きさ」の測定であって、「個数濃度」はそれ以上にばらつきやすいと指摘されています[UFB-GEN-26]。製品ページでいちばん目を引く「1ccに◯個」という数字こそ、実はもっとも幅を持ちやすい量なのです。

さらに、NTA はごく小さい泡を取りこぼしやすいという指摘もありますが、この比較値(別の測定法RMMとの比較)は原典を確認できておらず、確かな傾向とまでは言えません[UFB-GEN-27]。表示された数字が、泡の全体像をそのまま表しているとは限らない、ということです。


だから「泡だけ」を切り分ける工夫がある

測定を信頼できるものにするため、規格の側でも対策が進んでいます。

一つが除去法と呼ばれる考え方です。ISO 24261-1 は、いったん気泡を消してしまい、消す前と後の差分を取ることで「気泡に由来する信号だけ」を切り出す評価手順を定めています[UFB-DEF-10]。その気泡を消すための具体的な技術(加熱や減圧などで泡だけを抜く)を定めたのが ISO 24261-2 です[UFB-DEF-11]。泡はなくせるがゴミは残る、という性質を利用して両者を引き算で分ける発想です。

さらに、不純物の影響そのものを補正しようという規格案も審議中です。ISO 20018-1 は、泡を含まない「ブランク水」を使って不純物の混入分を差し引き、UFB本来のサイズと個数濃度を評価する方法を定めようとしています[UFB-DEF-12]。2026年時点では最終段階(FDIS=最終国際規格案)まで進んでいますが、まだ発行前で、確定した基準ではありません。

測る道具の正確さを支える土台もあります。産業技術総合研究所の計量標準総合センター(NMIJ)は、粒径や個数濃度を測る装置を校正するためのサービスや、大きさのわかった標準粒子を国家計量標準として供給しています[UFB-GEN-06]。いわば全国の測定器が使う共通の「物差し」です。こうした基盤があって初めて、各社の数字を比べる前提が整っていきます。

整理すると、粒子の大きさや個数を測る手法(NTAやDLSなど)自体は、標準化された確立した技術です。発展の途上にあるのは、その先の「泡と不純物を切り分ける」「不純物の影響を補正する」といった部分です。つまり、数字を出す道具はある。ただし"泡だけ"を精度よく取り出す仕組みはまだ整いつつある段階、という理解が正確です。


「1ccに◯個」は"多いほど良い"では読めない

ここまでを踏まえて、製品の数字の読み方を整理します。

たとえば株式会社サイエンスは、ミストシャワー製品について「水1ccに超微細気泡を約1600万個含む」とし、この個数は業界団体ファインバブル産業会(FBIA)の試験法規格に則って測定したと説明しています[UFB-HOME-22]。またリンナイは、UFB搭載ガス給湯器について「1ccあたり最大2730万個、平均粒径100.3〜119.0ナノメートル」とFBIA認証の中で示しています[UFB-HOME-19]。

これらは規格に沿って測った相応の根拠のある数字です。ですが、次の理由から「数が多い製品ほど効く」という単純な比較には使えません。

  • 数字はもともと幅を持つ。測り方・前処理・施設で変わりうる[UFB-DEF-14][UFB-GEN-26]。
  • 泡と不純物が混ざって数えられている可能性がある[UFB-DEF-14][UFB-GEN-07]。
  • そもそも「個数が多いこと」自体は、肌や洗浄への効果を保証しない。効果は用途ごとに別で確かめる必要がある。

もう一つ見ておきたいのが「大きさ」の区分です。ファインバブルにはUFB(1マイクロメートル未満)とマイクロバブル(1〜100マイクロメートル)があり、一つの製品が両方を出すこともあります。だから「ファインバブル」「ナノ」といった言葉だけでなく、公表されている気泡径の数値や、FBIA認証の性能カテゴリ(どのサイズ域の発生性能を評価した区分か)まで確かめると、その製品が実際にどのサイズの泡を出すのかがつかめます(サイズ区分と表記の見方は「UFBは怪しい?規格と測定から検証」でも詳しく扱っています)。


数字と上手につきあうための3つの目安

誇大な数値訴求に振り回されないための、実用的な読み方はシンプルです。

  1. 数字は「目安」として受け取る。 「1ccに◯個」は泡が出ている手がかりであって、絶対値でも効果の証明でもありません。
  2. 測定条件とセットで見る。 どの手法で、どういう前処理で測ったかまで書いてあるほど、その数字は信頼して読めます。条件が書かれていない大きな数字ほど割り引いて考えます。
  3. 最後は「用途での裏づけ」で選ぶ。 数の多さより、自分の目的(肌・洗濯・掃除など)でその製品に検証があるかを優先します。

この3つを持っておけば、「1ccに◯万個」という見出しに気持ちを持っていかれずに済みます。数字はゼロか本物かの二択ではなく、「幅のある目安」。そう捉えるのがいちばん実態に合っています。


こんな人は、数字より先にこちらを

数字は敵ではありません。読み方さえ知っていれば、製品を見比べるときの心強い手がかりになります。


よくある質問

Q. 「1ccに1600万個」のような数字は信じていいですか? A. 「泡がたくさん出ている」目安としては参考になります。ただし測定法には施設ごとのばらつきがあり[UFB-GEN-26]、多くの手法は泡と不純物を区別できないため[UFB-DEF-14]、数字はもともと幅を持ちます。絶対値としてではなく目安として受け取り、用途の裏づけと合わせて見てください。

Q. 個数が多い製品ほど効果が高いのですか? A. そうとは限りません。個数が多いこと自体は、肌や洗浄への効果を保証しません。効果は用途ごとに別で確かめる必要があります。数字の大小での単純比較は避けるのが無難です。

Q. なぜ測定でばらつくのですか? A. UFBは可視光の波長と同程度〜より小さく、直接見て数えるのが難しいため、光の散らばりや動きから計算で推定しています。どの手法を使うか、事前にどう前処理するかで結果が変わります。標準的な粒子を使ったNTAの国際比較でも、手順を統一しないと研究室間のばらつきが大きいと報告されています[UFB-GEN-26]。

Q. 泡だけを正しく数える方法はないのですか? A. 工夫は進んでいます。気泡を消して差分から泡由来だけを取り出す除去法(ISO 24261)[UFB-DEF-10][UFB-DEF-11]や、不純物の混入を補正する規格案(FDIS段階・発行前)[UFB-DEF-12]があります。浮力で泡と固体を見分けるRMMという手法も提案されています(比較データは要検証)[UFB-GEN-27]。大きさや個数を測る手法自体は確立していますが、"泡だけ"を切り分ける部分はまだ整いつつある段階です。

Q. 「ナノ」と書いてあれば1マイクロメートル未満ですか? A. 必ずしもそうとは限りません。「ファインバブル」はUFBとマイクロバブルの総称で、一つの製品が両方を出すこともあります。宣伝の言葉ではなく、公表されている気泡径の数値や、FBIA認証の性能カテゴリまで確かめるのが確実です。


この記事の参考文献(出典)

  • ISO/TR 23015:2020「ファインバブル測定技術マトリクス」(公的な情報:国際規格の技術文書)[UFB-DEF-14]
  • NTA国際計測間比較, Journal of Nanoparticle Research 15:2101, 2013(研究で確認:査読つき学術誌)[UFB-GEN-26]
  • UFBの共振式質量測定(RMM)による計測・識別, SPIE Proc. 9232 ほか, 2014(査読つき会議録。NTAとの比較値は原典未確認・要検証)[UFB-GEN-27]
  • ISO 24261-1:2020「除去法による評価手順」(公的な情報:国際規格)[UFB-DEF-10]
  • ISO 24261-2:2021「ファインバブル除去技術」(公的な情報:国際規格)[UFB-DEF-11]
  • ISO 20018-1「UFB特性・微粒子夾雑補正」(2026年時点でFDIS段階・発行前)(公的な情報:国際規格案)[UFB-DEF-12]
  • 産総研 計量標準総合センター(NMIJ)粒子計測研究グループ(公的な情報:国家計量標準機関)[UFB-GEN-06]
  • 安井久一「ウルトラファインバブル」日本音響学会誌 73(7), 2017(研究で確認:学会誌解説)[UFB-GEN-07]
  • 株式会社サイエンス「ミラブル」ミスト水1cc約1600万個(FBIA試験法規格に準拠)(メーカー調べ)[UFB-HOME-22]
  • リンナイ UFB給湯器 1cc最大2730万個・平均粒径100.3〜119.0nm(FBIA認証)(メーカー調べ)[UFB-HOME-19]

※情報源の区分 —— 研究で確認/公的な情報/メーカー調べ/使った人の声。出典番号[UFB-…]は編集部の引用データベースに対応します。

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